REPORT

「みんな」の公共空間を水辺から考える

水辺のまち再生プロジェクト
「水辺の自由使用のススメ
〜NOBORDER, BE WILD.〜」

開催日:2018年7月11日
会場:アートエリアB1

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水辺を行儀よく占拠する

2018年7月11日、中之島の文化的・歴史的な可能性を探る「クリエイティブ・アイランド・ラボ中之島」の第一弾として、公開イベントが開催されました。
招かれたのは「水辺のまち再生プロジェクト」から末村巧さん、黒田篤史さん、笹尾和宏さん、中津壮人さんの4名。同プロジェクトは、中之島を象徴する川や水辺を楽しく活用し、暮らしを面白くする試みとして2003年にスタートしました。

いまでこそカフェやショップなどが立ち並ぶ中之島の川辺ですが、03年当時は注目する人も今ほどはおらず、周囲のビルも道路側が表で「裏」にあたる川に面した部屋は空室も多く、倉庫として使われているので照明の灯らない部屋もたくさんありました。そんな状況に対して「きっと水辺が好きになる。」というテーマを掲げ、グループはスタートしました。

野外映画観賞会、川から見えるまちなみを舞台に見立てた水上移動演劇なども手掛けてきましたが、基本的な姿勢は許可や手続きを経ないゲリラ的活動。けれども法律や法令を犯すのではなく、都市空間を「行儀よく穏便にジャックする」ことが同プロジェクトのモットーです。例えば、定期的に続けている「水辺ダイナー」は、人の通行に邪魔にならないスキマのような場所を見つけてディナーを行う活動です。また、ホームセンターなどで買える木の板とクランプを使って仮設のサイドテーブルをこしらえて、水の都の景観を愛でながら、ワインや手巻き寿司を楽しむ「クランピング」という活動もあります。
周囲をパトロールしている警察や警備員から声をかけられることもごくたまにあるそうですが、公共空間の自由使用という考え方は行政の中にもあり、頭ごなしに禁止されたり立ち退きを求められたりすることはほとんどないそう。実際のところ、「変なことをやっている人たちがいるんですけど……」という市民からの通報で声をかけられるのが大半で、きちんと話せばほとんど伝わるのだとか。それもあって、警官や市民との意図しない衝突が起こらないよう、水辺ダイナーではTPOをわきまえた服装をすること、料理をきちんと皿に盛ることなど、「ちゃんとしたアクティビティ」として周囲の目に映ることを大切にしていると言います。
メンバーの4人は、このようにスマートなパブリック空間の可能性を追求することを茶道・書道ならぬ「公道」ととらえています。

「やっていいこと」の領域を増やすには?

そもそも、こんな変わった活動を始めた理由はなんだったのでしょうか?
工業デザイン、不動産業、観光、都市開発と、異なる職種で働く4人の関心はそれぞれ異なるそうですが、共有しているのは「受動的にサービスを提供されるだけでなく、個人が主体的に遊ぶ」ことの必要性です。
半年前にグループに加わった中津さんは、故郷の香川県に比べて大阪には空間利用の自由度が少なく、自らの創意工夫で新しい目的・機能を見出すことの難しさに疑問を持ったのが参加の理由として挙げていました。対照的に、久保田さんは「都市だからこそ生まれるコミュニケーションがある」と語り、都市生活者として気持ちよく、楽しく暮らす方法を模索した結果が、水辺ダイナーやクランピングなどのアクティビティなのだと言います。
社会において「やっていいこと」と「やってはダメなこと」の比率は後者の方が多いと考えがちですが、法律的な判断のラインはそうでもないそうです。しかし、同時にNGの線引きが明確ではないのも多様な人が暮らす社会のあり様です。私たち自身が思い込んでいる「やっていいこと」と「やってはダメなこと」のグラデーションの比率を変えていこうと思うならば、多くの人が「これならよいかも。ちょっとかっこいいかも」と思えるような雰囲気をつくっていくことが大切だと、水辺のまち再生プロジェクトは考えています。

「やってはダメなこと」の領域が次第に増えつつある社会状況のなかで、「法律違反」ではなく、「そんなに難しくないけれど、ちょっと歯ごたえのある」活動の可能性と社会的な合意を広げていきたいと、4人は語りました。最後に末村さんのコメントを紹介しましょう。
「準備に30分以上かかることはやらず、手軽にできて楽しいから日常的にやりたくなる感覚を大切にしています。でも、既存の音楽イベントやフードイベントのように、外から与えられたものをただ楽しむだけではちょっと寂しい。公共空間は自分だけのものではないけれど、自分のものでもある、っていう意識を噛みしめていきたいです。」

[文=島貫泰介]

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