REPORT

現代アートと古陶磁との出会い

大阪市立東洋陶磁美術館
「現代アートと古陶磁との出会い」
(開催日:2018.12.9)

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日本屈指の陶磁器コレクションで知られる大阪市立東洋陶磁美術館では、現在「オブジェクト・ポートレイト Object Portraits by Eric Zetterquist」展が開催中です。
日本の古陶磁を被写体にした現代美術作品を手がけるアメリカ人アーティスト、エリック・ゼッタクイストさんによる同展では、館が所蔵する陶磁器34点を題材にした新作が公開されています。

これに合わせて、ゼッタクイストさん、イムラアートギャラリースタッフの久野はるなさん、大阪大学准教授の高安啓介さん、同館館長の出川哲朗さん、そして同館学芸員で展覧会を企画した宮川智美さんによるプレゼンテーション&トーク「現代アートと古陶磁との出会い」が12月9日に行われました。

第1部「物の肖像」では、ゼッタクイストさんが自作と自身の活動について語る講演を行いました。
1962年にオハイオ州で生まれたゼッタクイストさんは、子どもの頃から日本に興味を持ち、高校時代には鹿児島県に留学しました。そこで多くの陶磁器、骨董、そして西洋近代美術に触れた経験が、古陶磁とアートへの関心の入り口になったといいます。
ニューヨーク大学在学中に上智大学でも学んだ彼は、現代美術家である杉本博司さんが運営する「民藝ギャラリー」のスタッフとして働き始め、ギャラリーの仕事だけでなく、杉本さんの創作活動のアシスタントも務めました。杉本さんと言えば、日本美術や考古遺物などを着想源にした歴史と人類の文化史に紐づく作品で知られるアーティスト。その影響を間近で受けながらゼッタクイストさんは自身の芸術を切り拓いていきました。

そして彼が行き着いたのが、陶磁器の「かたち」に注目する手法。博物学的に対象の全体像を収めるのではなく、部分をクローズアップし、ライティングによって生じる光沢や輪郭を画像処理によって白黒2色のミニマルな世界に還元するというシリーズを展開しています。
アメリカで発展した芸術動向であるミニマリズムや抽象表現主義絵画の技術・理論を用いながら、日本的な精神性・スピリチュアリティにも親和性を持つその表現によって、「もの」を集中して見るという洞察の思考を鑑賞者と共有し、さらには作品が地理的・時間的に隔てられた東西や古今をつなぐ架け橋になることを望んでいるのだとゼッタクイストさんは語り、そういった思想を「尽くすアート」と形容します。多様な価値観が交錯する現代ですが、数千年という長い時間のなかで同じ美しいものを愛し、感動する普遍的な感覚を人類は持っています。そういった感性、喜びを伝えてシェアする「伝道」の姿勢こそが自分の性分なのではないか、と述べました。

ゼッタクイストさんのプレゼンテーションを受けての第2部では、東洋陶磁美術館館長の出川さんがダゲールやマン・レイなど近代写真の祖・巨匠たちを紹介しながら、ゼッタクイスト作品は単なる写真ではなく、新しい技術を反映させた新しい表現方法であると評しました。
また同館学芸員の宮川さんは、主に近代以降の日本における陶磁器の受容……西洋的な価値観によって古陶磁の見方が変わっていった変遷を解説。その系譜の先に、20世紀後半の抽象表現芸術を価値観の尺度として作品を展開するゼッタクイストさんの独自性について述べました。

第3部の久野さん、高安さんのプレゼンテーションは、第2部で展開された解釈を批評的に補うものでした。久野さんはゼッタクイストさんの関心は必ずしも「かたち」に限定されておらず、撮影、画像処理、出力サイズといった作業工程で生じるさまざまな「選択」の連続によっても定義づけられると述べました。
また、高安さんは、ゼッタクイストさんの作品が「かたち」自体への注目をうながすことから「かたち」とは一体何かと疑問を投げかけました。私たちは「かたち」という言葉だけを聞くと、ものの輪郭のことを想起するででしょうが、輪郭線をみているような場合でも、地と図との関係をとらえているのだということを幾つかの例によって説明しました。そして、オブジェクトポートレートでは、影の「かたち」が 浮かび上がること、地の「かたち」 が 浮かび上がることと、型でない「かたち」が 躍動していることが、大きな魅力であると語りました。

この後も客席との質疑応答、登壇者全員による短いディスカッションが交わされるなど、約4時間に及ぶトークは熱を帯びたものでした。
アートにはさまざまな役割がありますが、出川さんがプレゼンテーション内で示したように、ある時代の人々が持っていた視覚、価値観を間接的に後世に伝えるものとして掛け軸や絵巻物が機能することはあります。それと同様に、デジタル技術の機能を駆使して、これまでにとらえることのできなかったかたちや価値基準を示すゼッタクイスト作品も、この21世紀初頭に流通した思考・思想をアーカイブするものになるのかもしれません。古陶磁と現代アートが長大な時間のなかで結ばれるような感覚に満ちたイベントでした。

[文=島貫泰介]

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