宇川直宏(DOMMUNE/“現在美術家”)

堂島川と土佐堀川に挟まれ、淀川支流の中州であり、また大阪湾から遡上(そじょう)する二大航路の安治川と木津川の分岐点でもある中之島を文化の交流地点と捉え、日本の伝統芸能からポップカルチャーまでを網羅するアーティスト同士のEXTREME JAPANコラボレーション(全10回|18案提出)公演企画!
またこれらは、ライブ・ストリーミング・チャンネルDOMMUNE「EXTREME JAPAN 中之島 CROSSING」のタイトルで配信し、日本の芸術/芸能/文化の歴史と多様性を映し出すべき今世紀的EDITを施し、世界に発信する!

中之島の南を流れる土佐堀川

コンラッド大阪

コミュニケーション消費時代のプロジェクトプラン

(中之島マップを見ながら)どれを見たかな。国際会議場、科学館のプラネタリウム、フェスティバルタワーのロビー、スマートラグジュアリーホテルであるコンラッドのラウンジ、フェスティバルホールのエントランス、中之島図書館のロビー、リバーフォーラム、中央公会堂、中之島公園、アートエリアB1と地上の広場…だいたい10ヶ所くらいですね。

中之島マップ

考えてみたのは、ランドマークとアーティストの融合ではなくて、環境に投じた<芸術と芸能>のコラボレーションです。
つまりアーティスト一人が環境と相対するのではなく、アーティストと環境が相互に作用し合い、オーディエンスをも巻き込んで、化学反応を可視化する方法です。まさにここ中之島のあり方と近い。今日リバークルーズで見てきた、水都大阪の、緑に囲まれた川の交流と分岐そして融合という一連の流れと、水質に潜む様々な微生物や有機物の混交、また江戸から続く歴史と文化と経済の融合するミクスチャー・オアシス中之島そのものを、新たにリエディットする発想です。

堂島川と阪神高速

土佐堀川

御堂筋

今日は歩きながら、70年の大阪万博の話をしたり、コンラッドで名和晃平の彫刻と遭遇したり、中之島公園で長蛇の列を作ったインスタグラマーのオフ会を見かけたりしましたが、全ての話に連動しているのは文化消費の歴史的変遷。これでしょ!細かくまとめると、高度経済成長期のモノを売る時代からバブル期の情報を崇める時代、その後のオタクカルチャーのコンテンツ消費(物語消費、データベース消費)の時代を通過して、コミュニケーション消費の時代へと大気圏突入(笑)。そんな空気が圧縮された状況の中、大気の分子を感じ取るように、コミュニケーションの質を探求する時代をいま生きている。大阪でその歴史を享受してきた中之島が、いかに魅力的なステージなのか、そのことが今回のツアーで理解できました。

中之島東側先端

コンラッド大阪

70年大阪万博での最大のよびものの一つが「月の石」で、新三種の神器である3Cが、カラーテレビとクーラーと自動車だった、そんな物質的な豊かさを追い求めてきた時代から、80年代に差し掛かると、セゾンカルチャーは情報を売って文化をはぐくみ、高度経済成長を果たした日本人を「不思議、大好き。」な人種に育て、いかに「おいしい生活」を注入していくかという…そんな優雅な時代の到来です。そこでサブカルチャーとハイカルチャーは接続され、我々は大衆の成熟を果たし、文化的な豊かさを手に入れましたが、当時はまだまだ消費に埋没していただけでした。振り返ってみると、あの時代、日本は情報化社会に差し掛かる直前の高度な消費社会を生きていたというわけです。90年代に突入し、バブルが崩壊して以降、堤清二さんの構築した文化インフラは、インターネットの台頭と入れ替わるように、その隆盛に陰りを見せます。インターネット元年と言われる95年は、インターネットが阪神淡路大震災でボランティアネットワークとして広まり、流行語大賞にノミネートされて、ようやく大衆に認知された年です。地下鉄サリン事件も95年。そう、余談ですが、オウム真理教は当時、信者が修行の名目でホワイトボックスのデスクトップを組み立てていた、マハーポーシャというパソコンショップを経営していたので、インターネットの大衆化に一石を投じたと考えることもできます。

時を経て、2011年。東日本大震災でもTwitterやFacebookなどのSNSが、地上波と電話回線のネットワークが崩壊した状況での被災地の安否確認や、帰宅困難者の受け入れ先施設の情報の共有を果たし、大衆レヴェルで注目されましたよね。その後、LINEは既読機能を加えたわけですし、だから、奇しくも2つの震災を通じてサイバースペースのインフラが注目され、整備されたという事実がありますね。

そのようなネット文化の発展と共に、情報は無料になった。並行して、おたくカルチャーが勃興します。おたくは、高度消費者であると同時に生産者であり、DIYで巨大なマーケットを作っていく。ライヴストリーミング文脈では、ソーシャルメディアの夜明けとされた2010年に、USTREAMがバズり、コンテンツ消費の時代に2007年から実験配信を重ねてきたニコニコ生放送はテン年代隆盛を極めました。しかし、現在、ニコニコ動画もオワコンと囁かれ、Abema TVは無料でネットの中にマスを作ろうとしているし、また、Netflix、amazonプライムビデオの台頭で、サブスクが常態となり、コンテンツが定額になったので、消費するにはキリがなくなった。そして「インスタ映え」が流行語として大賞に輝いた2017年頃からコミュニケーション消費の時代に一転しました。そのようにリア充の復権と共にリア充のアティテュードが大衆化されたので、リア充自体も死語になり(笑)同時に自宅で引きこもって警備している奴らの特権性は地に落ちた。ストリーミングの文脈では、生主は絶滅して、YOUTUBERの独壇場となりました。そしてきゃりーぱみゅぱみゅ→渡辺直美以降、現在はSNSと実社会を行き来する、コミュニケーション消費の時代に突入しましたよね。そこまで充実していない人達にも盛れるアプリが蔓延し、盛りに盛ったリア充(死語)アピールの時代へと突入(笑)。だからこそ、ライブストリーミングもSHOWROOM、LINE LIVE、17Live、TikTokと、メルカリ以降のライヴコマースもインフルエンサーや、カリスマライバーに支えられて個人配信の露出メディアはU-20のイットガールに完全にジャックされていますよね。平日からエフェクティヴにハレの日をアピールし、ニコ生隆盛期には呪いのように打ち出されていたケの日もケガレも全て一掃されて、ある意味ヴァーチャルに盛りまくって”リアルの充実”を果たす(笑)。テクノロジーで日常を乗り越える(笑)。そして盛ったものどうしの国境を超えたコミュニケーションの時代へと変転しました。そして平成が終わり、令和に入れ替わり、今度はコミュニケーションの質が求められ、コト消費、トキ消費、エモ消費と、体験から時間共有、そして繋がりへと消費の質も推移してきた。

フェスティバルタワー

大阪府立中之島図書館

だからこの企画もコミュニケーションを軸に考えました。「この日、この場所に来ないと絶対に体験できない何か」という“いまここ性”が重要。例えばアーティスト一人が生み出すものじゃなくて、中之島の川の流れのように(笑)日本の芸術と芸能の多様性とその歴史との交流です。それを見せていく。インバウンドにも響くようなコラボレーションとして沸き起こる何か。ポップと伝統芸能の融合、パフォーミングアーツと演芸の激突、テクノロジーと身体、トラップとコンテンポラリーアートの蜜月他、振れ幅最強なので、ちょっと見てください。

<宇川直宏によるプロジェクト企画案>

(今後の交渉のため、名前は伏せてあります。想像してお楽しみ下さい)

①サイケデリック・ロック・ミュージシャン × 映像作家

②ビッグバンド × TVマルチタレント

③ジャズミュージシャン × 襖からくり × グラフィックアーティスト × 文楽

④ホーメイ歌手 × 浪曲師

⑤オルタナティブ・ノイズアーティスト × パイプオルガン奏者

⑥実験的ミュージシャン × 彫刻家

⑦テクノユニット × 落語家

⑧音楽ユニット × コンテンポラリーダンサー

⑨ヒップホップアーティスト × 現代美術家

⑩ヴォーカリスト × アンドロイド

⑪メディアアーティスト × 家電蒐集家

⑫メタルダンスユニット × 雅楽演奏ユニット

⑬マルチメディア・コスプレユニット × 奇術家集団

⑭POPアーティスト × 影絵作家

⑮演歌歌手 × ウルトラテクノロジスト集団

⑯シャンソン歌手 × オーディオビジュアル集団

⑰ロックバンド × メディアアーティスト

⑱ミュージシャン × シンガーソングライター × メディアアーティスト

今のプレゼンで何個までいったかな? 18個? 頭おかしいですね(笑)。でも、全て冒頭で語ったコンセプトに当てはまるでしょう?
そして過半数が、チケットも秒速で完売する勢いがあるものをプラン立てています。

中之島という歴史と文化が幾十にも交流する地域で、アーティストと環境が相互に作用し合い、オーディエンスをも巻き込んで、今まであり得なかった化学反応を可視化させていくわけです。だから僕のキュレーションでは今までオファーしてこなかったようなPOPアイコンをあえてこのコラボレーションでは生かしていきたいのです。むしろPOPアイコンを歴史と伝統に充てがうことによる芸能/演芸的UP DATE。例えば、日本を象徴するようなゴッドファーザー的演歌歌手アイコンと、最前衛なテクノロジー集団とを融合させることで生まれてくる土着的アヴァンギャルド(笑)。この演歌歌手は、アイドルやインスタグラマーやインフルエンサーやユーチューバーのような移ろいやすく消費されやすい現代的アイコンとは一線を画し、普遍的強度のある存在なので、テクノロジーをいくら纏っても、どんなプラグインで盛っても絶対消費されない。

あと、これらステージは全プログラムをDOMMUNEで収録し、のちにライヴストリーミングしていきます。なのでとにかく現場に足を運んでもらい、エクストリームな意味での異文化交流の場として中之島の歴史を更新してゆくプロジェクトです。

大阪万博が2025年ですよね。それまでに少しずつ実現させていきたいですね。今世紀に行う万博って、果たしてどんな形が正解?って皆議論しています。Google Earthで世界の路地裏まで丸写しにされ、NASAも月や火星をライブストリーミングしているこの時代に、一体、何をもって「万国」なのか?「EXTREME JAPAN 中之島 CROSSING」は、クールジャパン政策がもろく崩れ果てたあとの、EXTREMEという記号の深化を考案し、来年から5年かけて約10プログラム程のプロジェクトを実現させるというスケジュール感がいいと思います。

中之島東先端

木津川水門

生命体が群集するライフログとしての“中之島”

因みに僕は讃岐高松、生粋のうどん県出身者なのですが、遺伝子の話でいうと、例えば同じ両親のDNAを受け継いでいたとしても、例えば20年前に生まれてたら、あるいは、同じ四国でも香川じゃなくて少し地域がズレた徳島で生まれてたら、現在の自分にはなれないですよね。全く別のアイデンティティが形成されていた。幼少期に受けた影響やモラトリアム期の葛藤を経てここに存在しているわけで。与えられた情報から環境や風土によって影響を受け変化し、研ぎ澄まされたり、もしくは削除していったり、危うい橋を渡りながらエネルギーを放ってなんとか今ここに立っている。それこそがバイオの為せる技といえるでしょう(笑)。つまり、表現なんて全て他者の影響下にしか成立していないということなんです。結局、誰かの恩恵の上に胡座をかいていて、歴史の隅っこに自分がいる。アイデンティティは自己同一性と訳されますが、本来自分の内側から発生したものではないし、選び取って獲得したものだから、そんなに強固なものでもなく、明日受けた強烈な影響によってもまだまだ同一性は拡散していくし…つまり、危うく保たれているものです。環境の影響下でどんどん揺らいで、再構築されてそのミクスチャー度合いによって、今現在の自分がいるのに=それが「私」であると皆がんばって無理やり辻褄を合わせているわけですよ(笑)。自分の内面はまだまだ混沌としていて流動的で不安定なのに。

だからそこでなおさら中之島の「川の流れのように」ね。♪おだやかに、この身をまかせていたい(笑)。そしてゆるやかに、いくつも時代は過ぎて(笑)。地図さえない、それもまた人生(笑)。いや、地図はちゃんとありましたね。しかし、今日見せて頂きましたからね、水路の営みを。1日の中で何度か水門を閉じたり開いたりして水位を保って、中之島のアイデンティティは成り立っているわけです。顕微鏡に持ち替えるとその川の中では、微生物が蠢き、有機物が混じり合っている。そんな中にバースに似てるからって阪神ファンに胴上げされて道頓堀川に投げ落とされたカーネル・サンダースが24年ぶりに発見されたりしてるわけでしょ(笑)。エクストリームジャパンですよね。

そう考えると、水都大阪の川の交流と分岐そして融合という一連の流れを包括する中之島は、やっぱり現行のSNSと同じく人々のライフログが渦巻いてるプラットフォームだと捉えられますね。当然、ライフログが蓄積される現場は、生きています。その生きている気配が川を通じて混交し、ミクスチャー・オアシス中之島が日々新しく生まれ変わっている。そして「川の流れのように」♪とめどなく、空が黄昏に染まるだけ~。だからこのコンセプトを打ち出したのです(笑)。

堂島川

中之島香雪美術館

(写真:松見拓也)

宇川直宏 Naohiro Ukawa

1968年香川県生まれ。現”在”美術家。映像作家、グラフィックデザイナー、VJ、文筆家、大学教授など、80年代末より、さまざまな領域で多岐にわたる活動を行う。2001年「Buzz Club: News from Japan」(MoMA PS1・ニューヨーク)、「JAM: Tokyo-London」(Barbican Art Gallery・ロンドン)に参加して以来、国内外の多くの展覧会で作品を発表。2010 年には、日本初のライブストリーミングスタジオ兼チャンネル「DOMMUNE」を個人で開局。記録的なビューワー数で国内外にて話題を呼び、2011年文化庁メディア芸術祭推薦作品に選出される。宇川はDOMMUNEスタジオで日々産み出される番組の、撮影行為、配信行為、記録行為を、自らの"現在美術作品"と位置づける。2016年アルスエレクトロニカ(オーストリア/リンツ)のトレインホールにステージ幅500Mのサテライトスタジオ「DOMMUNE LINZ!」を開設、2019年、瀬戸内国際芸術祭にてサテライトスタジオ「DOMMUNE SETOUCHI」を開設。どちらも大きな話題となった他、これまでDOMMUNEは数々の現代美術の国際展に参加し、ロンドン、ドルトムント、ストックホルム、パリ、ムンバイ、リンツ、福島、山口、大阪、香川、金沢、秋田、札幌...と、全世界にサテライトスタジオをつくり、偏在(いま、ここ)と、遍在(いつでも、どこでも)の意味を同時に探求し続けている。10年間に渡って配信した番組は約5000番組/約7000時間/150テラを越え、トータル視聴者数1億人を超える。2019年、リニューアルした渋谷PARCO 9Fにスタジオを移転。「SUPER DOMMUNE」に進化し、5G以降の最前衛テクノロジーと共に未来を見据えたUPDATEを図る。

DOMMUNE「EXTREME JAPAN 中之島 CROSSING」